熊本市内で大学病院レベルの治療を提供
リンパ浮腫とは?
リンパ浮腫(りんぱふしゅ)とは、リンパ管の流れが滞ることで体の一部に慢性的なむくみ(浮腫)が生じる病気です。
リンパ管は、体の老廃物や余分な水分、たんぱく質を回収して血液に戻す重要な役割を担っています。
その流れが障害されると、組織間にリンパ液がたまり、むくみや炎症、皮膚の変化が生じます。
原因と分類
リンパ浮腫は、大きく以下の2つに分類されます。
1. 原発性リンパ浮腫(Primary Lymphedema)
生まれつきリンパ管の発達が不十分で、発症するタイプです。
リンパ浮腫患者全体の約10%と推測されています。
日本の原発性リンパ浮腫患者数は、2009年の厚労科研研究班の報告では3,600名程度(人口10万人対3.00人)とされています。
発症時期によって、先天性(出生~1年以内)、早発性(35歳未満)、遅発性(35歳以上)と分類されます。[Kinmonthの分類]
男女比は男:女=1:1~9で女性に多い。
2. 二次性リンパ浮腫(Secondary Lymphedema)
がんの手術・放射線治療・感染・外傷など、後天的な原因によって発症するタイプです。
乳がん、子宮がん、前立腺がん、大腸がんの治療後に生じるケースが多いです。
たとえば乳がん術後では、腋窩リンパ節郭清(腋の下のリンパ節を切除)や放射線照射によってリンパ管が損傷し、腕にむくみが生じることがあります。
婦人科がんや前立腺がんの治療後では脚にむくみが生じることがあります。
リンパ系の仕組みとリンパ浮腫の発症メカニズム

血液は心臓から出て、心臓に戻ってきます。
リンパ液は、抹消(手や足)から始まり、毛細リンパ管から吸収され、リンパ節を経て静脈系に戻ります。
この流れは筋肉の収縮や呼吸運動などで支えられており、静脈のように弁構造を持つことで逆流を防いでいます。


しかし、何らかの原因でリンパ管やリンパ節の機能が低下すると、流れが滞り、「リンパ液のうっ滞 ⇒ リンパ浮腫」が起こります。
長期的には、リンパ管の変性、線維化、脂肪増生を伴い、単なる「むくみ」ではなく、構造的変化を伴う難治性疾患へ進行します。
リンパ浮腫の診断


”むくみ(浮腫)”の原因は様々あります。
当院ではICG検査を行い”リンパ浮腫"の診断を行っています。
ICGは以前から肝機能の検査に使われていた薬剤です。
ICGを皮下に注射すると近くのリンパ管内に入り、流れます。
この流れを小型赤外線カメラで観察することができ、それ利用するのが「ICG検査」です。
リンパ管機能検査の中で唯一の保険適応が通っているリンパシンチグラフィと比較するとICG検査は自費の検査になりますが、初期のリンパ浮腫にも感度が良く、軽微なリンパ管機能異常も検出可能です。
リンパ浮腫の症状と生活への影響
- 手足のむくみ、重だるさ、疼痛
- 肌のつっぱり感や硬さ
- 感染を繰り返す(蜂窩織炎)
- 服や靴が合わなくなる
- 見た目の変化による心理的負担
リンパ浮腫は、見た目だけでなく、心と体の生活の質(QOL)に大きな影響を与える病気です。
放置した場合に起こること
リンパ浮腫を放置すると、リンパ管が変性し、むくみが慢性化し、次第に皮膚が厚く硬くなります(象皮病:elephantiasis)。
また、細菌感染(蜂窩織炎)を繰り返すことで炎症が悪化し、皮膚炎・潰瘍・関節拘縮・ADL低下などの合併症につながります。
進行すると、見た目の変化や痛み、社会生活の制限により**心理的負担(うつ・不安)**を伴うことも少なくありません。
したがって、早期発見・早期治療が何より重要です。
「年齢のせい」と思って放置せず、専門医への早めの相談をおすすめします。
リンパ浮腫の治療で得られるメリット
リンパ浮腫の治療によって、以下のような改善が期待できます。
- むくみや痛みの軽減
- 感染や炎症の予防
- 動きやすさ・歩行の改善
- 着衣のしやすさ、見た目の回復
- 精神的ストレスの軽減
治療によって「日常生活の快適さ」や「自分らしさ」を取り戻すことが可能です。
リンパ浮腫の治療法
リンパ浮腫の治療は、「むくみを取る」だけではなく、リンパ液の流れを再構築し、再発を防ぐことを目的とします。
日本リンパ学会『リンパ浮腫診療ガイドライン第3版(2020年)』や国際リンパ学会(ISL, 2020)のコンセンサスに基づき、治療は大きく次の2段階に分けられます。
1. 保存的治療(非手術治療)
保存的治療は、リンパ浮腫の第一選択であり、リンパ浮腫の進行を抑え、症状を軽減する基本的治療です。
その中心となるのが「複合的理学療法(Complex Decongestive Therapy: CDT)」で、以下の4つの要素で構成されます。
たまった水分を押し出す治療ですが、根本的な問題の”流れにくさ”を治療するものではないので、またむくみが出現する場合も多いです。
(1)圧迫療法(Compression Therapy)


弾性包帯や弾性ストッキングを用いて、静脈還流とリンパ流を促進します。
圧迫は24時間にわたり継続することが理想的で、圧力は30〜40mmHg前後が推奨されます。
圧迫の不適切な装着はかえって循環障害を悪化させるため、医療従事者の指導のもとで行うことが重要です。
(2)リンパドレナージ(Manual Lymph Drainage)
専門的に訓練されたセラピストによるマッサージ技術で、表在リンパ管の流れを促します。
強い圧ではなく、「皮膚がわずかに動く程度」のやさしいタッチが特徴です。
日本ではリンパ浮腫療法士(Lymphedema Therapist)の資格を持つ理学療法士や看護師が担当することが多く、当院でも「リンパ浮腫外来」でドレナージと圧迫を組み合わせた治療を実施しています。
(3)運動療法(Exercise Therapy)
圧迫下での軽い運動(足首の屈伸、歩行、深呼吸など)によって、筋肉ポンプ作用を活用し、リンパ流を改善します。
最近の研究では、軽度の有酸素運動やストレッチがリンパ管の再生を促進する可能性も報告されています(Mihara et al., Plast Reconstr Surg, 2018)。
(4)スキンケア(Skin Care)
リンパ浮腫の皮膚は感染に弱く、細菌感染(蜂窩織炎)が重症化しやすいため、清潔と保湿を保つことが重要です。
わずかな傷や虫刺されも発症の引き金になるため、日常的なスキンチェックを推奨します。
2. 手術的治療(外科的治療)
手術の目的は、閉塞したリンパ経路を再構築し、リンパ液を別ルートに逃がすことです。
いずれも熟練した顕微鏡手術技術が求められる繊細な治療です。リンパの通り道を改善させる治療で、根本的な解決を目指します。
種類としては、リンパ管静脈吻合術、リンパ節移植術、脂肪吸引併用術などがあります。
当院では世界的に一番普及している、リンパ管静脈吻合術を行っています。
※手術のみでリンパ浮腫が全て改善できるわけではありません。圧迫療法などとの併用が大事になります。
リンパ管静脈吻合術(LVA: Lymphaticovenular Anastomosis):保険適応

顕微鏡下で約1〜2mmのリンパ管と静脈をつなぐ(吻合する)手術で、低侵襲かつ高い効果をもたらす治療として世界的に普及しています。

- 麻酔:局所麻酔
- 手術時間:2〜3時間程度
- 日帰り
- 傷跡:1か所1~3cm程度
- 効果:むくみの軽減、感染頻度の低下、生活の質改善
リンパ管は0.5mm~2mmと極めて細く、高倍率の手術用顕微鏡を有しており、熟練した術者でないと吻合が難しいため、顕微鏡手術の経験豊富な形成外科医が担当することが不可欠です。
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「手術は最後の手段?」
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- 早期に行ってこそ大きな効果を発揮すると言われています。
- リンパ管が変性し状態が悪くなってから手術を受けても十分な効果は期待できないと言われています。
- 「手術は最後の手段」という誤解が生まれる原因は医療従事者もリンパ浮腫について間違った教育がなされていたり、そもそも知らないからになります。
→特に熊本県は”形成外科医”の数が少ないので、”リンパ浮腫”についても専門的に行っている施設が少なく、医療者もどこに紹介していいか分からないという声があります。
→ICG検査によるリンパ浮腫の診断、弾性ストッキングの選定、専門スタッフによるマッサージ・圧迫療法、手術療法(LVA)などリンパ浮腫に関する診断・保存療法・手術療法を一施設で網羅して行っているクリニックは熊本県にはあまりありません。 - 医療従事者が知らないので、一般の患者さんたちが知らないのも無理はないですが、リンパ浮腫には改善の余地はありますので、お気軽にご相談ください。
3. 治療選択の考え方とエビデンス
ガイドラインでは、治療法の選択はリンパ浮腫のステージに応じて段階的に行うことが推奨されています。
LVA術後の平均下肢周径減少率は約40%、蜂窩織炎発症率は70%減少とされ、長期的な生活の質(QOL)改善効果が確認されています。[Miharaら(2018)]
4. 手術後のリハビリと長期フォロー
手術後もリンパドレナージや圧迫療法の継続が大事です。再発防止と新生リンパ経路の維持を行います。
特に術後3か月間は、リンパ流が再構築される重要な時期であり、術後フォローアップの質が最終的な治療成績を左右します。
当院が選ばれる理由
- 熊本県では形成外科医の数が少なく、その影響もあり、リンパ浮腫治療を行っている医療機関が少ない現状があります。
- リンパ浮腫をどこに相談したらいいか医療者も困っています。
- リンパ浮腫の診断・圧迫療法・リンパマッサージ・リンパ管静脈吻合術(LVA)と、リンパ浮腫における診断~治療(保存的治療~手術治療)を当クリニックで全て行えます。
- 当院はクリニック(診療所)という気軽に受診できる医療機関でありながら、手術用顕微鏡を有し、それを用いてたリンパ管静脈吻合術が可能な施設になります。
- リンパ浮腫治療は専門スタッフ(形成外科医・認定看護師)によるチーム医療が不可欠ですが、それをご提供可能です。
- 熊本市内でアクセスが比較的良好です。
- 地域で完結できる高度医療を目指しています。
外来予約の流れ
当日直接ご来院頂いた場合も可能な限り診察いたしますが、お待たせする時間が長くなるため事前予約をお勧めしております。
- お電話またはWEBフォームからご予約ください。
- もしあればで検査データをご持参ください。
- 初診ではリンパ浮腫の進行度を診断し、最適な治療法をご提案します。
※当院は保険医療機関です。そのため、なるべく予約優先で診療を行っておりますが、緊急で縫合が必要な方などがいらっしゃいます。その場合、予約通り診療ができず待ち時間が発生することがあります。ご迷惑をおかけしまして申し訳ありませんが、ご理解頂けますと幸いです。
よくある質問(FAQ)
Q. 手術を受ければむくみは完全になくなりますか?
A. 完全にゼロになるわけではありませんが、症状の軽減と再発予防が期待できます。
Q. 熊本以外からの受診も可能ですか?
A. 可能です。遠方からの患者さまも多数来院されています。
Q. 手術後、日常生活に制限はありますか?
A.手術当日は患部を濡らさないようにお願いしておりますが、翌日からは石鹸で洗っていただいています。その他、特に制限はありません。
追伸 院長からのメッセージ

リンパ浮腫は、外見の変化も症状も伴う病気で、これまで苦しむ方を多く見てきました。
むくみや痛み、日常生活の制限によって「もう治らないのでは」と不安を感じる方も少なくありません。
確かに完全に元通りになるものではありませんが、少しでも生活がしやすくなるお手伝いは可能です。
癌の治療が終わって、今までは仕方がないと言われていたリンパ浮腫にも完全ではないですが、治療方法があります。
リンパ浮腫は、適切な診断と手術によって改善が期待できる病気です。
クリニックでも、大学病院と同等レベルの治療を受けていただけるよう、日々の診療に全力を注いでいます。
どうか一人で悩まずに、まずはお気軽にご相談ください。

